議会政治研究会の発足

「政治主導の政策展開と議会の役割」の検証 

 

   約四半世紀前から言われてきた「政治主導」が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大等の「未曽有」と呼ばれる事態への対処の要請も相まって、いよいよ定着し、政策展開の様相の変化としてかなり意識できるようになったのではないか。詳細な分析は、他の論文に譲るが、我々の議会に関する今日的課題の認識は、これを起因とする。 

 ここで言う「政治主導」とは、「官僚主導」に対するものであり、これに関し、飯尾潤は、論文「政策の質と官僚制の役割―安倍内閣における「官僚主導」を例にして―」『年報行政研究』54 (令元.5.31)において、「官僚制は、業界団体をはじめとする社会諸集団や地方自治体の上下ネットワークを通して、社会的利害の把握・媒介に努めており、仕切られた枠内ではあるが、それぞれの官僚制は社会に根ざした存在であった(省庁代表制)。」「政府内部における漸変主義(incrementalism)によって形成・決定されることになって、社会各層の利益をそれなりに調整し得たため、官僚制を中心に作成される政策は、有効性はもちろん、社会的受け容れ可能なものとして決定されていったのである。」とする。しかし、「バブル経済崩壊後の1990年代半ば以降、官僚制が作ってきた政策の有効性が疑われるとともに、相次ぐ官僚スキャンダルによって官僚制の威信が失われる。」としている。平成13年(2001年)1月の中央省庁再編以降について、飯尾は「そこでは、首相主導という形で、大臣や補佐官なども含めた執政府が成立し、官僚制に対して主体的に指示が出せる体制ができつつある。」とする。一方「漸変主義的な政策形成が主流であった戦後日本の政策形成方式を前提に、「政治主導」などの流れに沿って、官邸主導体制が成立したために、新たな仕組みにおいて必要とされる手当が不足し、気付かないうちに政策が粗くなってしまう」とし、「政策は理想の政策が一つあれば十分という、選択肢の比較をしない考え方が、広く共有されており、政治家側の多くが、何か問題があれば官僚が自動的に政策を用意するという感覚を持っているために、「スピード感」が過度に強調され、必要であるはずの分析や、検討、議論といった要素が弱くなっている面もあると言えよう」とする。「内閣制の変容」後の「政策論議の健全性を確保するためには、政治家や政党の行動様式や、国会などの仕組みが変化することも必要」としている。 

  それは、部分の実効性の検証等、担当大臣をして国会の審議で「仕事が増えた」と言わせる、すなわち詰まっていなかった施策への対応として、野党の政策提言等が国会において法律等に変換され得るような状況として表出するのである。そこで十分に部分の実効性の検証等が行われなければ、特に法の執行において、様々な不具合が生じてしまうということでもある。法執行の多くを地方自治体が担っている現状からすると、地方議会の政策立案、行政監視の役割も同様に、より重要となっていると言えよう。 

  本来的に議会に求められている役割を、十全に果たすということとも言えるが、こうした状況認識、そしてそこから生じる立法過程における問題意識を、できるだけ広く共有しながら、議会の在り方に反映させていくことが、求められていると考える。 

今、ここに、改めて議会制民主主義に焦点を置いた研究の結集を呼びかける。 

  (令和5年(2023年)8月26日  議会制民主主義研究会発起人一同)